主婦×建築士の家づくり 家を建てるタイミングときっかけ
こんにちは。
かとう建築設計事務所の主婦×建築士です。
【家を建てる時、建てから】では、私が家を建てた時に考えていたこと、実際に住んでみて感じていることなどを、主婦の目線を交えつつ綴っていきます。
私の家は建ててから12年が経ちました。
建築したのは、かとう建築設計事務所入社前のこと。
ちょうど東日本大震災があった年です。
子どもが生まれて半年ほど経った頃に検討を始め、知人の勤める建築士事務所に依頼して建てました。
我が家の基本情報
2011年に自然素材の家を建築
ムクの床材、漆喰壁、4造作建具、造作キッチンなどが特徴
家族構成は筆者、夫、子ども2人、うさぎ1匹
家を建てるベストなタイミングとは?
家を建てるタイミングはひとによって様々。
「この時」という正解があるわけではありません。
年齢や家族構成、資金計画、さらに社会情勢なども加味すると、自分にとっていつがベストなタイミングなのか、判断に迷ってしまいますよね。
国土交通省による最新の住宅市場動向調査報告書(令和4年度)によると、注文住宅取得世帯の世帯主の年齢は30代が最も多く36%。
平均年齢は40代となっています。
出典:国土交通省住宅局 住宅市場動向調査報告書(令和4年度)
一般に、家を建てるタイミングには以下のようなライフイベントが大きく影響を与えると言われています。
その他、転勤や子どもの自立など
居住環境を見直すきっかけは、ライフスタイルの変化が関係している人が多いのかもしれませんね。
特に30代は結婚、出産、子どもの入園入学等のライフイベントが多い年齢層。
早いうちに住宅ローンの支払いを始めれば給与所得があるうちに完済できる、という計画が成り立つのも、住宅取得に踏み切る大きな理由のひとつかもしれません。
また、社会情勢による住宅価格への影響も見過ごせません。
金利の変動、住宅ローン減税など、各種補助制度、減税制度、優遇制度などが利用できるタイミングで住宅取得を考える場合もあるでしょう。
実際にはライフイベントや社会情勢などを複合的に判断し、家族にとってより良い選択をしなければなりません。
場当たり的な判断ではなく、ある程度余裕を持って時期や資金計画を立てることが大切ですね。
【体験談】家を建てる決意をしたきっかけと家を建てるまで
我が家の場合、新築の具体的な検討を始めたのは出産から半年経った頃です
でも、そのタイミングを決めたのは、子どもを授かった時でした。
思い描いていたライフプラン
20代後半で結婚した当時、それほど綿密な将来設計をしていたわけではありません。
夫と2人の新たな生活でイメージしていたライフプランは、かなりざっくりとしたものです。
「子どもは3~4歳くらいの年齢差で2人欲しいね」
「第一子は結婚から2年後くらいを目標に、とりあえずは共働きで貯蓄をしよう」
「将来は一戸建てで暮らしたいね」
大変恵まれていたことに、私たちにはすでに相続した土地があり、すぐに家を建てるという選択も可能でした。
ですが子どもは授かりものですし、まずは頭金の準備期間として貯蓄をし、夫が30代半ばくらいまでに家を建てられればと考えていました。
家族構成の見通しが立たっていないうちは焦ることもないかな・・・と、のんびりと構えていましたね。
きっかけとなったのはライフプランの「想定外」
結婚して2年と少し経った頃、幸運にも授かった子はまさかの双子。
ただでさえ大変さが予想される初めての育児。
まさか2人同時に育てることになるとは思っていませんでした。
当時住んでいたのは賃貸のテラスハウス。
1階にはLDKと水廻り、2階に個室が2つとバルコニーがある、新婚にはちょうど良い住まいでした。
でも、2人育児は全くの想定外。
子どもが1人ならともかく、2人を育てるには適しているとは言えない間取りでした。
当時の住まいが「子育てに適していない」と感じた理由
- ワンフロアで生活を完結させられる広さがなく、1日に何度も2人の子どもを抱えて階段を往復することに
- 直線階段を下りた先は玄関土間。転落したら大けがの危険が!
- 玄関を出ると目の前が交通量の多い県道。万が一の飛び出しが命取り
生活圏にリスクが多いと、どうしてもストレスが増えますよね。
自宅がリスクだらけでは、安心して生活を送ることができません。
乳幼児からは目を離してはいけないと言われますが、日中ワンオペで育児をする場合、どうがんばっても目が行き届かない瞬間が生じます。
お母さんだって(お父さんだって)トイレを我慢し続けるわけにはいきません。
ちょっと洗濯物を干したり、取り込んだりする間、子どもの安全を確保したうえでひとりにせざるを得ないこともあります。
宅配便を受け取るために、一瞬玄関を開けに行くことだってあるはずです。
乳幼児の親は、そんな一瞬にさえ神経を張り詰めながら育児をしています。
理想は誰かが常に赤ちゃんの傍で見守っていること。
人手が足りていれば、交代で見守ることも可能です。
でも、それが難しい場合は、できるだけリスクの少ない環境を整えるべきです。
そんなわけで、我が家にとって最も優先すべきは、子育ての環境を整えること。
双子を身籠ったことで、住まいをなんとかしなければという思いが、急に迫ってきたように思います。
新居をどうするか? 選択肢は3つ
さて、双子妊娠をきっかけに見直すことにした住まい。
子育て環境を整えるためには、引っ越しは避けて通れそうにありません。
夫婦で考えた住まいの見直し計画、選択肢は3つありました。
- 双子育児がしやすい間取りの賃貸住宅へ引っ越す
- 相続した土地(津波が心配な地域)に家を建てる
- 高台に土地を探して家を建てる
幸い私たちには亡くなった義父から相続し、所有していた土地がありました。
駅やバス停も近くにあり買い物にも困らない静かな住宅地です。
唯一のネックは、大地震が起きた時に津波被害が予想される地域だということ。
親や親族からは、高台に土地を探したら? という意見もありました。
でも、土地を探すにはかなりの時間と労力がかかるもの。
高台となると、持っていた土地よりも地価が高い可能性も大いにあります。
まずは双子育児が可能な賃貸へ引っ越し、産後落ち着いてからゆっくり土地探しをしようか? とも考えました。
その方が時間をかけて熟考できるからです。
ただしその場合、まず賃貸物件を探す手間と引っ越し費用、敷金礼金、それから新たな土地を見つけて家を建てるまでの家賃が必要。
大きな遠回りになってしまいます。
悩んだ末に私たちが選択したのは、
津波の心配はぬぐえませんでしたが、災害の多い日本ではどこに住んでもリスクと隣り合わせ。
私たちが選んだのは、子育て環境を整えるための最短ルートでした。
タイムリミットは自由に歩き出すまで?
元々持っていた土地に家を建てることを決めたものの、すぐに家を建てて引っ越せるわけではありません。
注文住宅となると、住宅会社選びから始まり、何度も綿密な打ち合わせをして、建築にも数カ月はかかります。
それらを踏まえ、我が家にとって無理のないスケジュールを考える必要がありました。
乳幼児を育てながら引っ越しの荷造りをするのは大変な労力が予想されます。
ならば時間に余裕のある出産前に引っ越す方が望ましいでしょうか。
妊娠がわかってから出産予定日まで、約7カ月の期間がありました。
でも、注文住宅を一から計画し完成した家に引っ越すには、少々無理があります。
出産前に新居に引っ越すのは現実的ではありませんでした。
私にとっては初めての出産育児。
赤ちゃんのお世話に追われる生活は予想がついたものの、いつ頃なら家づくりの具体的な検討に入れるのかは予測困難。
そんな時間的、精神的余裕があるかどうかもわかりませんでした。
けれども、先にも述べた通り最も優先すべきは子育ての環境を整えることです。
理想は2人の幼児が自由に歩き出す頃までに、ワンオペの時でも安全に見守れること。
個人差はありますが、赤ちゃんがひとり歩きをするようになるのは満1歳前後。
歩くことに慣れると好奇心も加速して、行動範囲も一気に広がります。
1歳くらいまでの赤ちゃんの発達
引っ越し時期の目標は子どもが自由に歩き出すまでと考え、そこから逆算して生後半年くらいから具体的な検討に入りました。
家を建てるきっかけを得てから新居に引っ越すまで
家を建てるきっかけを得てから、実際に家を建てて引っ越すまでは以下のような流れでした。
【出産前】
【出産後】 生後6ヵ月
生後12ヵ月
1歳7ヵ月
双子を授かったことをきっかけに新築を決意
情報収集&建築依頼先の決定
家に対する要望をリストアップ
新築現場の見学、打ち合わせを開始
着工
完成、引っ越し
子どもたちがつたい歩きをするようになったのは1歳前。
手を放して歩くようになったのは1歳3カ月頃でした。
双子ということもあって、発達はゆっくりめだったかもしれません。
当時のテラスハウスでの生活は、狭いLDK内もベビーサークルでがっちりとガード。
子どもはキッチンや階段には行けないようにしていました。
網戸を突き破って落下する恐れがあるため、掃き出し窓も開けられません。
安全のためとはいえ、自由に出入りすることができない子どもにとっても大人にとっても、正直、窮屈な生活でした。
2人の乳児を抱えながらの打ち合わせや引っ越し準備は、想像以上にハード。
周囲の助けを借りられなければ、気持ちが折れてしまっていたかもしれません。
ですが、家が完成し、ベビーサークルだらけではない新居の中を自由に歩き回れるようになった子どもたちのキラキラした目を見て、心底ホッとしたのを覚えています。
さいごに
私たち家族にとって、家を建てる一番の目的は子育てに適した環境を整えることでした。
実際のところ、双子育児は猫の手も借りたいほどの大変さ。
あれこれ段取りをしながら打ち合わせや見学会に足を運び、なんとか乗り越えましたが、「子育て環境を整えたい」という軸がぶれなかったからこそ出来たことかもしれません。
新築の家を建てるベストなタイミングは家庭によってそれぞれです。
ある程度のライフプランを描いていても、計画通りに行かないことももちろんあります。
そんな時こそ、
どういう目的で家を建てたいのか
その目的のために、家族にとってベストなタイミングはいつなのか
をじっくり考えてみる良いきっかけなのかもしれません。