主婦×建築士の家づくり 自然素材の家

自然素材の家

こんにちは。

かとう建築設計事務所の主婦×建築士です。

【家を建てる時、建てから】では、私が家を建てた時に考えていたこと、実際に住んでみて感じていることなどを、主婦の目線を交えつつ綴っていきます。

私の家は昨年で10周年を迎えました。

建築したのは、かとう建築設計事務所入社前のこと。

ちょうど東日本大震災があった年です。

子どもが生まれて半年ほど経った頃に検討を始め、知人の勤める建築士事務所に依頼して建てました。

我が家の基本情報

2011年に自然素材の家を建築

ムクの床材、漆喰壁、造作建具、造作キッチンなどが特徴

家族構成は筆者、夫、子ども2人、うさぎ1匹

コンセプトは自然素材の家

木の家具や食器、おもちゃなど、木の表面をそっと撫でるとなめらかで気持ちが良いですよね。

私は木材のさらさらすべすべとした感触、優しいぬくもりがとても好きです。

木のおもちゃ

我が家の家づくりで最も重視したことは、なるべく自然素材を使うことでした。

家づくりにおける夫の唯一の要望が、「自然素材をたくさん使いたい」だったからです。

家族みんながアレルギー体質で、当時子どもはまだ0歳。

赤ちゃんをお風呂に入れる時に無添加の石鹸を使うように、なるべく刺激の少ない住まいにしたいと考えたのです。

また、私は木が好きだった故に、学生時代は木材の勉強を専門としていました。

勉学として木材の特性について理解を深めると同時に、体感として、木に囲まれる心地良さをいつも感じていました。

木を使った“もくもくした家”は、私の思い描くあたたかな家庭にぴったり。

夫と意見が一致したことで、我が家の家づくりのコンセプトは自然素材の家に決まりました。

自然素材の取り入れ方

自然素材の家といっても、その取り入れ方は色々あります。

床も壁も天井も、外部に至るまで木材で作るログハウスは、究極の自然素材の家と言えますね。

しかし、全てを自然素材で作ろうと思うと、実際にはなかなか難しいものです。

コスト面はもちろん、長きにわたって自分で維持管理していくことを考えると、ちょっと大変そう。

自分たちが生活する場として、現実味のある落としどころを見つけることも大切です。

その人の能力や才能、資質などを考慮して適した部署や任務に配することを「適材適所」と言います。

実は「適材適所」という言葉は、伝統的な建築現場における木材の使い分けが由来と言われています。

世界中で確認されている木の種類(樹種)は、なんと6万種類以上。

針葉樹と広葉樹はもちろん、同じ針葉樹であっても樹種によってそれぞれ性質が異なります。

家づくりの際にどの木材をどう配置すると最適かを考え、木の性質に合わせて作り上げる。

それが「適材適所」のもともとの意味なのです。

木目バラエティ

私たちが目指したのは、工業製品化されている建材も取り入れつつ、なるべく床や壁などの面材に自然素材を使うことでした。

建材には自然素材にはない良さがあります。

安定した品質、コストパフォーマンスの良さ、清掃性や防水性のような付与された機能など。

必要に応じてそれらを取り入れるのも、適材適所と言えるのではないでしょうか。

我が家が自然素材を取り入れた主な部位は、床、水廻り以外の壁、柱や梁などの構造材です。

天井と水廻りの壁にはビニルクロス、サッシや玄関ドアは断熱性能や防犯のことを考えて建材を使っています。

自然素材の家に10年以上住んでみて

自然素材を使った家だからといって汚さないよう、傷つけないように神経を遣って生活しているかというと、そんなことはありません。

むしろ傷がついても“思い出の足跡”くらいの気持ちで、おおらかに暮らしています。

そんな気持ちにさせてくれるのも、木に囲まれた心地良さの中で過ごしているおかげかもしれませんね。

自然素材の家

〇実はお手入れが簡単だった漆喰壁

漆喰の壁というと、

「お手入れが大変そう」

「汚さないように気を遣う」

という声が聞こえてきそうです。

確かに、真っ白な漆喰が汚れると目に付きやすいのが難点です。

特にスイッチ周りや、何気なく触ってしまう出隅など。

手垢汚れと思われる黒ずみができると、とても気になります。

子供が小さかった頃は、白い壁に小さな手形がくっきり・・・なんて経験も。

ですが、実は汚れを落とすのがとても簡単。

濡らしたメラミンスポンジで軽く擦るだけで、見事に白さが復活します。

気になった時にささっと拭くだけ。

子供のお手伝いでも出来てしまう手軽さです。

新築当初は漆喰のひび割れも懸念事項のひとつでした。

住み始めて半年くらい経った頃、リビングに2ヶ所ほど気になるひび割れが。

実は漆喰が一番ひび割れしやすいのは、施工してから半年後くらいまでです。

漆喰そのものや、柱や下地材の乾燥収縮によって亀裂が入ってしまうことがあるため、この最初のひび割れはやむを得ないと覚悟していました。

我が家は築1年程度でひび割れた部分に漆喰を上塗りしてメンテナンスを実施。

その後は気になるようなひび割れは出来なくなりました。

だから今は、お手入れと言えばたまに汚れを落とすだけ。

セルフメンテナンスができるのはとても助かります。

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余談ですが、我が家は数年前からうさぎを飼っています。

うさぎは本能的にかじることが大好き。

木や紙、布、電化製品のケーブルなど、個体差はあるものの、興味を持ったら何でもかじりたがります。

うさ飼いさんの間でよく聞くのが、お家の壁紙をかじってボロボロにしてしまったという話。

ビニルクロスの味が美味しいとは思えませんが、かじると簡単に千切れて壁からビリビリと剥がれる壁紙は、うさぎにとって魅惑的なおもちゃなのかもしれません。

ところが我が家のうさぎは漆喰の壁には全く興味がありません。

柱はたまにかじられますが、漆喰の壁は無傷のまま。

うさぎとの生活でも問題なく過ごせています。

ムク材の床に年季が出てきた

タモ床材

ムク材の「無垢」とは、まじりけがないことを表す言葉です。

接着剤などを使わず、一本の原木から切り出した1枚の板でできたものをムク材と言います。

我が家の床材には、タモという木を使用しています。

タモは和洋問わずナチュラルテイストなインテリアに合う美しい木目と、堅く頑丈で、高い弾力性が特徴の木です。

現在の我が家の床は10年という歳月によって深みと風合いを増し、自然な艶が美しい状態になっています。

表面は新築時よりも遥かに滑らかです。

まるで、使い込むと手に馴染んでくる品質の良い革製品のよう。

新築当時、子供が小さかったため、飲み物をこぼしたり硬いおもちゃを落としたりは日常茶飯事。

2人の子供のトイレトレーニングも、なかなかに大変でした。

はじめのうちは、きれいな家に染みや傷をつけられたくないと思うものですよね。

でも、なるべく早くしっかり拭き取れば良いだけ。

それは自然素材でなくても同じことです。

ムク材の床だからといって、神経質に暮らす必要はありませんでした。

日々のお手入れは掃除機をかけるだけ。

年に1~2回、気が向いた時に拭き掃除をすることもありますが、メンテナンスというほどのメンテナンスはしたことがありません。

床の軋みや浮き、隙間が生じるなどの不具合も、今のところは無縁です。

一般的な複合フローリングに比べて初期費用はかかったものの、10年経って真価を発揮してくれています。

自然素材の家の良さ

ぬくもりを感じる

夏にさらさらひんやりとした木の床に寝転がりたくなる

なんとなく落ち着く

癒される感じがする

これらは住宅の性能として評価できないものです。

明確な基準となるものもなければ、数値として示すことも難しいからです。

けれども、実際に暮らすうえでは体感する心地良さもとても大切です。

性能は家づくりの指標のひとつにはなりますが、これから先、家族がずっと暮らしていく場には心地良さも求めたいものですよね。

また、自然素材の良さを語る上で欠かせないのは、年月の経過とともに風合いが増していくところです。

10年20年と経てば、住む人も年を重ね変化していきます。

身の回りの多くのものは徐々に劣化して、中には壊れてしまうものもあるでしょう。

劣化が少なく、経年による風合いの変化を楽しめるのは自然素材ならでは。

だんだんとツヤと味わいが出てくるムクの床なら、一緒に年を重ねていくのが楽しみに思えるかもしれませんね。

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