主婦×建築士の家づくり こだわりの造作キッチン

調理器具

こんにちは。

かとう建築設計事務所の主婦×建築士です。

【家を建てる時、建てから】では、私が家を建てた時に考えていたこと、実際に住んでみて感じていることなどを、主婦の目線を交えつつ綴っていこうと思います。

私の家は昨年で10周年を迎えました。

建築したのは、かとう建築設計事務所入社前のこと。

ちょうど東日本大震災があった年です。

子どもが生まれて半年ほど経った頃に検討を始め、知人の勤める建築士事務所に依頼して建てました。

我が家の基本情報

2011年に自然素材の家を建築

ムクの床材、漆喰壁、造作建具、造作キッチンなどが特徴

家族構成は筆者、夫、子ども2人、うさぎ1匹

私が造作キッチンを作ろうと思ったわけ

料理が好き

キッチンにはこだわりたい

自然素材の家に馴染むおしゃれなキッチンがいい

でも、片付けは得意とは言い難い

収納は沢山欲しい

ただ、なんでもかんでも仕舞うのはちょっと面倒

使いたいものにすぐ手が届く便利さが欲しい

料理は好きだけど、手間はなるべく減らしたいから

家族と会話しながら料理ができる程度にオープンで

でも、手元が丸見えにならない程度にクローズで

リビングから見えず、且つオープンな収納があるといいかも

お客さんの立場になると、主婦の私はとってもわがままです。

フライパンのイラスト
キッチンツールのイラスト
やかんのイラスト

前職ではお客様のショールーム見学に同行する機会が多くありました。

住宅設備メーカーのショールームに行くと、最新の魅力的なキッチンを沢山見ることが出来ます。

メーカーそれぞれに特徴があって、デザインも多様。

ピカピカに磨き上げられたキッチンを見ているとワクワクします。

お客様に同行しつつ、密かに自分が家を建てる時にはどんなキッチンにしようか考えるのは、とても楽しい時間でした。

ところが、いざ自分の家を建てるとなると、数あるキッチンの中からひとつを選ぶことができなかったのです。

デザインはこっちが気に入っているけど、あっちの機能も魅力的。

あれもこれも素敵で何を選べばいいのかわからない、という状態でした。

なら、いっそのこと、いいとこ取りしよう

自分のわがままな要望を叶えるキッチンにしよう

そんな想いから、世界にひとつだけのキッチンを造ることにしました。

造作キッチンってどんなもの?

キッチン図面

住まい手の要望に合わせてゼロから製作するキッチンを「造作キッチン」と言います。

製作キッチン、フルオーダーキッチンなどと呼称する場合もあります。

寸法、レイアウト、素材、調理機器に至るまで自由に設計することができるため、自分仕様のデザインや使い勝手を実現できます。

ただし、ショールームで完成品を確認できるメーカーキッチンとは違い、現場で完成するまで現物を確認することはできません。

完全なオーダーメイドになるため、設計者、製作者の力量も大事。

コストが高くなる傾向はあるものの、素材や設計の工夫によってコストを抑えることができるのも造作キッチンの良さです。

造作キッチンに抱いていたイメージ

 ・ 要望を詰め込んだら高額になるのでは?
 ・ 清掃性、メンテナンス性が悪いのでは?
 ・ 長持ちしないのでは?
 ・ そもそも研究し尽くして開発されたメーカーキッチンよりも、使い勝手が悪いのでは?

 

完全オーダーメイドのキッチンと言うと、こんな懸念を抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実際のところ、私も

 新築のうちは良くても、経年と共に劣化やメンテナンス性が気になるのでは?

 メーカーキッチンにしなかったことを後悔するのでは?

と考えていました。

それだけメーカーキッチンに対する潜在的な信頼があったのだと思います。

でも、建築士の端くれとして、自分で造作キッチンを使って確かめたいという気持ちも少しありました。

気になる清掃性、メンテナンス性は?

我が家の造作キッチンは、主にステンレスとシナ合板でできています。

造作キッチン

この10年間、特別なお手入れは何もしていません。

日常的にごくごく普通の拭き掃除などをしているだけです。

ですが、油汚れの染み付きや変色などは全くなく、心配していたような経年劣化も気にならず現在に至っています。

ワークトップとシンクはステンレス製。

ステンレスは耐熱性や耐薬品性だけでなく清掃性にも優れた素材です。

加工性にも優れているため、オリジナルの設計を実現しやすい素材でもあります。

10年間使っていても、磨けばピカピカ。

小さな傷はついていると思いますが、最初に傷が目立ちにくい表面加工をしてあるため気になりません。

キャビネットにはシナ合板を使い、ウレタン塗装を施しました。

シナ合板は木目にクセがなく、飽きがこないシンプルな見た目。

ウレタン塗装は耐水性があり、汚れても濡れ布巾でさっと拭くことができます。

一方、熱には弱いため、熱いお鍋などを直接置かないよう注意は必要です。

造作キッチンであっても、適材適所を心掛けて設計すれば綺麗な状態を維持していくのは難しくありません。

メーカーキッチンと同じように日頃のお手入れをすれば良いだけです。

食洗機やIHなどの機器類の方が先に寿命が来るかもしれませんね。

お金の話 金額はどう折り合いをつけたか?

メーカーキッチンと違って想像しにくいのが、お金のことではないでしょうか。

特別に設計してもらい、職人さんの手で作ってもらうことを考えると、とてもお金がかかりそうな気がしますよね。

確かにあれもこれもと全てにこだわりだしたら、限度がありません。

しかし、それはメーカーキッチンの場合でも同じです。

ハイグレードの商品にあれもこれもとオプションを加えたら、素敵なキッチンになることは間違いないでしょう。

でも、掛けられる金額には限りがあります。

家づくりの考え方と同じように、現実的な落としどころを考えることが大切です。

我が家の場合、予算はメーカーキッチンのミドルグレード程度と最初に決めました。

私は設備には強いこだわりがなかったため、IHや食洗機、レンジフードなどはベーシックなものを選択しました。

ミドルグレードのメーカーキッチンに組み込まれている製品と同等のものです。

一方、お金をかけたのはステンレスの部分です。

ワークトップ、シンク、扉や引き出しの引き手、後述する「隠せるオープン棚」にステンレスを採用しました。

これらはキッチンのデザインにも、使い勝手にも直結しています。

繋ぎ目のないワークトップとシンク、スポンジラック用の窪みなど、オリジナルの加工を沢山お願いしました。

こだわるところにお金を使い、こだわりの少ないところは抑える。

家づくりの基本的な考え方と同じです。

造作で叶った「隠せるオープン棚」

シンクの奥にあるのは「隠せるオープン棚」

使う度に出し入れするのがちょっと面倒、でも出したままにもしたくない物たち隠れ家です。

毎日のように使う調味料、ボウル、計量カップ、キッチンスケール、茶器のセットなどを置いています。

我が家のキッチンは、リビングダイニングが見渡せる対面式。

調理台とダイニングの間に立ち上がりのカウンターがあるタイプです。

せっかく立ち上がりがあるならと組み込んだのが、キッチン側から使える収納です。

よく使うものにさっと手が届き、作業もスムーズ。

作業をする手元も、出したままの道具も丸見えになりません。

私のわがままな要望を叶えてくれたこの収納は、造作だからこそ実現できたものです。

この便利さはもう手放せません。

造作でもできたステンレスのライン引き手

私がキッチンキャビネットに求めていたのは、シンプルでフラットなことでした。

イメージはメーカーキッチンでも比較的よく目にする、金属でできたライン状の引き手。

出っ張りがなく、濡れ手でも気にせず開閉できる引き手は、こだわりたい部分のひとつでした。

ただ、それまで設計に携わったことのある造作キッチンで、金属の引き手をオーダーした経験はありませんでした。

キャビネットの引き手と言えば、市販の取っ手やつまみか、木材加工で手掛けを作ってもらうか。

そもそも、細かい金属加工の対応をしてもらえるのか、普段取り扱わない部品を家具屋さんが扱ってくれるのか、造作で可能なラインがわからなかったのです。

けれども、設計士さんが作成してくれた図面をもとに業者間で調整をして下さり、私のイメージした通りのキャビネットが出来上がりました。

ステンレス引き手のキャビネット

シンプルな前板の中をすっと通っているラインが、加工して貰ったステンレスの引き手です。

おかげで調理中に小指1本で引き出しを開けることができ、汚れが付着しても拭き取りも簡単。

もちろん、服を引っ掛けてしまうこともありません。

造作では無理なのでは? と思った要望も、設計士さんと業者さんの協力によって形にしてもらうことができました。

未だについ濡れたままの手で引き出しを開けてしまう自分を省みても、ステンレスの引き手にこだわって良かったと大いに感謝しています。

造作キッチンの醍醐味とは

造作キッチンを使い始めて10年超。

これといった特別なお手入れはしていません。

たまにステンレスを磨き上げたり、レンジフードや食洗器のお手入れをするだけ。

それでもきれいなままの状態を保ち、生活に馴染んでいます。

機能や使い勝手は、メーカーキッチンに劣るところもあるでしょう。

最新の素敵なキッチンカタログを見て、惚れ惚れするような気持ちになることもあります。

でも、我が家のキッチンが一番しっくりくるのです。

世界にひとつだけの、自分の好きやこだわりがつまったキッチンだからこそ、愛着が湧いて大切に使っていこうと思えるのかもしれません。

これから先も10年20年と、一緒に年を重ねていきたい。

そんな愛着を持てることが造作キッチンの醍醐味だと思います。

この記事をSNSでシェア!