完成現場見学会で感じた体感する大切さ
こんにちは。
かとう建築設計事務所の主婦×建築士です。
【家を建てる時、建てから】では、私が家を建てた時に考えていたこと、実際に住んでみて感じていることなどを、主婦の目線を交えつつ綴っていきます。
家を建ててから、今年で12年を迎えます。
建築したのは、かとう建築設計事務所入社前のこと。
ちょうど東日本大震災があった年です。
子どもが生まれて半年ほど経った頃に検討を始め、知人の勤める建築士事務所に依頼して建てました。
我が家の基本情報
2011年に自然素材の家を建築
ムクの床材、漆喰壁、造作家具、造作キッチンなどが特徴
家族構成は筆者、夫、子ども2人、うさぎ1匹
注文住宅を建てるとなると、建築会社選びにはじまり、間取り、仕様など、決め事が沢山ありますよね。
打ち合わせのスケジュール調整に頭を悩ませる方もいると思います。
コロナ禍を経て、オンラインでの打ち合わせや会議がぐっと身近なものになりました。
今や自宅にいながら欲しい情報が手に入るだけでなく、簡単に情報を「共有」することができます。
けれども、画面を通してだけでは伝わらないこともあります。
広さや空気感、音、匂いなど、体感してみなければわからないことが家づくりには沢山関わってきます。
家は大きな買い物。
金額という点では言うまでもありませんが、それだけではありません。
これから長い時間を過ごしていく住まいを買うということは、その環境、そこで過ごす時間を買うということ。
新居のイメージが湧かない、しっくり来ないという場合にこそ、ぜひ、体感してみることをお勧めします。
魅せるモデルハウスと等身大の完成現場
総合住宅展示場などでモデルハウスを見てまわるのも楽しいものですが、よりリアリティを感じられるのが完成現場見学会です。
多くの場合、完成現場見学会は実際のお客様の住まいをお借りして開催されます。
つまり、そのご家庭の想いやストーリーを反映しつつも、限られた予算や広さの中で現実的な落としどころを計算されて建てられているのです。
家づくりの参考にするには、等身大の完成現場見学会にぜひ足を運んでみましょう。
【体験談】日常をイメージするなら、完成現場見学会がおすすめ
随分前のことですが、宿泊体験ができるモデルハウスに泊まった経験があります。
機能が充実した素敵なキッチンと開放感があっておしゃれなリビング。
とにかく広くてゴージャスな、ホテルのようなサニタリースペース。
おしゃれさに気分が上がり、くつろげる素敵なお家でした。
ところが、とても快適に一夜を過ごし朝になって感じたのは、これは“非日常”だということ。
冷静になって考えてみると、生活を営む場としては理想的とは言えない部分もありました。
広すぎて掃除が大変そう
キッチンと冷蔵庫が離れていて、家事動線はいまいちかも
ゴージャスなお風呂は素敵だけど、水道代が・・・。
きれいに維持するのも大変だね
吹抜けの階段、冬は寒そう
一晩泊まるには夢のような家でも、日常を考えると“住みたい家”ではありませんでした。
モデルハウスで日常を想像するには、少々背伸びが必要そうです。
完成現場見学会の場となる家は、お施主様がこれから実際に住む家。
仮想ではないリアルな家族が存在し、ライフスタイル、使い勝手のこだわり、生活の場としての合理性などが詰め込まれています。
等身大の住まいで家づくりのヒントを得るには、完成現場を見てみるのがおすすめです。
家づくりに不可欠な“イメージの共有”
家を建てようという時に不可欠な要素があります。
それは、家族で同じ方向を向くこと。
これから長い年月を共に暮らしていく家を作ろうということになっても、ご家族で歩調が合わないケースは、実は珍しくありません。
また、そもそも家づくりに対する意識に温度差があることも少なくありません。
ご家族で向いている方向がバラバラでは、いくらお金をかけても居心地の良い家を作ることはできません。
まずはご家族で同じ方向を向くことが不可欠です。
その助けになるのが、実際の家を見てイメージを共有すること。
イメージを共有し同じ方向を向くのが、家づくりの第一歩かもしれません。
【体験談】「自然素材の家」を具現化するために
我が家を建てる時、夫の唯一の要望は「なるべく自然素材を使いたい」というものでした。
私自身も木が大好きで、木質感のある家に憧れがありました。
この時点で、ある程度同じ方向を向くことができていたと言えるでしょう。
でも、それだけではイメージを共有できていることにはなりません。
「自然素材の家」「木の家」と聞いて、どんな家を想像しますか?
ログハウスのような家
柱や梁を敢えて強調した家
シンプルでナチュラルな雰囲気の家
内装にふんだんに木を使ったログハウスのような家
柱や梁などの木部を敢えて強調したおしゃれなイメージの家
床材やアクセントの一部に木を取り入れた、シンプルでナチュラルな雰囲気の家
「自然素材の家」と一口に言っても、そこから思い浮かべる想像はひとによって違います。
ひとつの正解があるわけでもありません。
私たち夫婦は、実際に完成現場に足を運び、色々な「自然素材の家」を見学しました。
そこでお互いに出し合った意見は、
- 木部の面積が広すぎても落ち着かない
- 木の節はあってもいいけれど、目立たない方が好み
- シンプルな白い壁があった方がしっくりくる
- 漆喰の壁は優しい感じがする
- こだわりたい部分なので、予算はしっかりかけたい
予算に関すること以外は、全て感覚的なものです。
感覚的なものだからこそ体感を共有し、対話をして方向性を確認し合いました。
「自然素材の家」具現化のための一歩となったのは、まさに見学会で実際に見て、触れて、感じた経験でした。
図面では想像しにくい部分を補う
家づくりの打ち合わせは、図面、構造や各種性能の説明資料、カタログ、サンプルなどを参照しながら進んでいきます。
けれども、それだけで新居の全体像を立体的、感覚的にイメージするのは難しいですよね。 特に、部屋の広さをイメージしにくい時には、実際に見てみるのが一番です。
【体験談】20帖のLDKは広いのか狭いのか
家づくりを始めてから、最初に提示されたプランのLDKの広さは20帖。
4人家族を想定すると、ごく平均的な広さと言えるでしょう。
ところが、図面を見た夫の第一声は
これって広さはどうなの?
広いの? 狭いの?
図面には部屋の広さや部材の大きさ、高さなどが具体的な数値で示されています。
でも、余程スケール感覚に優れていない限り、数値を見てもピンとこない場合の方が多いのではないでしょうか。
そもそも、広い狭いなどの感覚は人それぞれです。
私は狭いマンションで育ったため、20帖と聞けば十分に余裕があるように感じます。
けれども、郊外の広々とした一戸建てで育った夫にとっては、窮屈に感じるかもしれません。
また、実際の広さは20帖でも、より広く感じられれば良いのか?
それとも物理的にもう少し面積を広げたいのか?
というのも、人によって考え方が異なります。
物理的に広くすれば満足度は上がるかもしれません。
ですが、床面積が増えれば建築費用も嵩みます。
家全体の床面積をそのままにLDKを広くしようとすれば、他の部屋の面積を削る必要が生じます。
ならば、LDKの面積は極力変えずにより広く感じられる空間を作りたい
見学会では、この命題を頭に入れてLDK作りのヒントを探しました。
広さを感じる要素は、面積だけではありません。
天井高、開口部の大きさ、壁の量、部屋の形状、内装の色などによっても、かなり印象は変わるものです。
例えば、天井の高さは同じでも、天井に木材を貼って仕上げた部屋は天井が低く、少々狭く感じることがあります。
同じ広さの部屋でも、形状によって感覚が変わることも。
正方形の部屋、長方形の部屋、L字型の部屋、どんな形状が広く感じるでしょう。
実際に建物を見たことで、数値だけでは測れない感覚を養えたように思います。
我が家のLDKは20帖ですが、隣接する和室やランドリールームの扉を開放すると、視線に奥行きが出ます。
また、リビング部分の天井を少し高くしたのも、広く見せる工夫のひとつ。
実際には「広々リビング」と謳えるほどの広さではないものの、多少の余裕を感じられる空間になり満足しています。
感覚の違いに気づくきっかけに
家族であろうと、血の繋がった親子であろうと、暑さや寒さ、明るさ、匂い、音などに対する感覚は人によって違いますよね。
スケール感と同様に、他者との感覚の違いを理解するのは難しいことだと思います。
次の体験談は、私と夫の体感の違いに気づくきっかけとなった見学会です。
【体験談】断念した薪ストーブ 体感して気づいた感覚の違い
真冬に薪ストーブのあるお宅で見学会が開催されました。
薪ストーブに火が入った状態を体感できるのは、とても貴重な機会。
もともと薪ストーブに憧れがあった私は、楽しみな気持ちで出掛けました。
温かい! 家じゅうが暖かいって幸せ~!!
冷え性で寒いのが苦手な私にとって、家の中では冷えと無縁でいられるのが理想。
薪ストーブの近くは真冬でも半袖で過ごせそうな暖かさです。
家全体がほわっとした暖かさに包まれ、冷えを感じません。
炎のゆらぎを眺めるのも気持ちが安らぐ。
ダッチオーブンでシチューを作るなんて楽しみもあるなぁと、夢が膨らみます。
一方、夫は暑がりで寒さには比較的強いタイプ。
「暖かいというより暑いくらいだね。冬でも汗をかきそう」と、私とは正反対の感想でした。
寒がりの私と暑がりの夫。
もともとわかっていたことではありますが、温度に対する感覚が全然違います。
薪ストーブの暖かさを実感して、ふたりの感覚の違いを顕著に感じた瞬間でした。
結局、予算やメンテナンスの事情もあり、薪ストーブの導入は断念。
温度に対する感覚が違うなら、室温をよりコントロールしやすいエアコンで空調した方が良さそうという結論に至りました。
もしあの時、見学会で薪ストーブを体感せずに導入していたら。
私の憧れの生活は叶ったかもしれませんが、冬になるたびに夫婦喧嘩が勃発していたかもしれません。
さいごに
ここでご紹介した私の体験は、私の家づくりのほんの一幕に過ぎません。
体感しないとわからなかったことは実際にはまだまだあります。
人生の長い時間を過ごすことになる家は、確かに大きな買い物です。
建ててみたらイメージと違った、という失敗は誰でも避けたいもの。
ネットでポチっと買い物した商品のように、簡単に返品するわけにはいかないのです。
だからこそ、体感に勝るものはありません。
完成現場見学会に足を運び、ぜひご自分の目で見て、触れて、感じてみて下さい。