主婦×建築士の「こうすればよかった」13年目の家づくり反省会
こんにちは。
かとう建築設計事務所の主婦×建築士です。
【家を建てる時、建てから】では、私が家を建てた時に考えていたこと、実際に住んでみて感じていることなどを、主婦の目線を交えつつ綴っていきます。
私の家は建ててから12年が経ちました。
建築したのは、かとう建築設計事務所入社前のこと。
ちょうど東日本大震災があった年です。
子どもが生まれて半年ほど経った頃に検討を始め、知人の勤める建築士事務所に依頼して建てました。
我が家の基本情報
2011年に自然素材の家を建築
ムクの床材、漆喰壁、4造作建具、造作キッチンなどが特徴
家族構成は筆者、夫、子ども2人、うさぎ1匹
家は一生に一度の大きな買い物。
だから失敗も後悔もしたくない。
多くの方がそんな風に考えていると思います。
中でも注文住宅を建てるには、多くのお金と時間を費やします。
時間をかけて情報収集し、検討を重ね、打ち合わせを繰り返して建てるのが注文住宅。
建てた後もずっとそこで生活が続いていくのですから、後悔のないようにと願うのは当然ですね。
一方で、「家は3回建ててみないとわからない」という言葉を聞いたことがある方もいるでしょう。
これは、そこで暮らしてみて初めてわかる「こうすればよかった」「ちょっと失敗だったかも」という気持ちからくる言葉ではないでしょうか。
完成した時には理想が詰まった満足度100%の家かもしれません。
でも、「思っていたのと違った」という後悔は、住んでみないとなかなかわからないものです。
2011年に新築し、現在13年目に突入した我が家。
自分たちの住処にこれといって大きな不満はありません。
愛着と共に心地よく暮らしています。
ですが、家づくりに関して全く悔いがないというわけではありません。
と思う部分もあります。
これは必要なかったかも・・・
もっとこうすれば良かった
この記事では、10年以上暮らして感じている我が家の「こうすればよかった」をご紹介します。
①役割を失ったバルコニー
我が家には屋根置き式のバルコニーがあります。
家族4人分の布団を一度に干せる広さ。
天日干しした後の布団は、お日さまのいい匂い。
とても幸せな気持ちになれますよね。
ですが、布団を外干しするのはなかなかの重労働。
育児や家事、仕事の合間に重い布団を運んで、干して、取り込んで・・・
一人分ならともかく、家族全員分となると思いのほか負担が大きいのです。
ちょろちょろ動き回る幼い子の面倒を見ながらでは、大変さも倍増。
その大変さを解消してくれたのが、布団乾燥機でした。
朝起きてすぐに布団乾燥機をセット。
ほったらかしているだけで布団を乾燥してくれます。
重い布団を運ぶ必要がなく、天候や時間に左右されることもありません。
大気汚染物質に晒される心配もありません。
結果的に、布団の天日干しというバルコニーの役割が無くなってしまいました。
我が家の場合は、元々バルコニーに洗濯物を干すことを想定していません。
洗濯家事は1階のランドリールームと縁側で完結するからです。
では、なぜバルコニーを作ったのでしょう。
「あるのが当たり前」と考えていたからです。
バルコニーはあるのが当たり前、あった方が便利、という固定観念に縛られていたからです。
でも、使わないものをわざわざお金をかけて作るほど不合理なことはありませんよね。
今思えば、自分たちのライフスタイルに合った価値観をもっと重視しても良かったのかもしれません。
②開かずの勝手口
「勝手口って必要?」
勝手口は、ゴミ出しや洗濯物干しなど、リビングや玄関を通らずにスムーズな家事動線を設計するために設けるものですよね。
マンション育ちの私にとって、勝手口は必要性をあまり感じないものでした。
我が家の場合、キッチンから直接外に出る必要があるだろうか・・・。
近隣の住宅街の一戸建てを見ると、多くの家に勝手口があります。
私が設計に携わったお客様も、勝手口を設けることがほとんど。
バルコニーと同様、勝手口も「あるのが当たり前」と考えていました。
残念ながら、今は開かずの勝手口になっています。
勝手口を使う理由がないのです。
我が家はキッチンを起点に家事動線を重視した間取りです。
外へのアクセスも、キッチンからリビングを通って玄関へ一直線。
玄関を出ればすぐに駐車場です。
もともと家事の合理性を重視して設計した間取りのため、敢えて勝手口を経由する理由がなかったのです。
海水浴場のほど近くにあった祖母の家は、洗面脱衣室に勝手口がありました。
海から帰り、外の散水栓で足を洗ったらすぐに洗面所へ。
室内に砂を落とさずにシャワーを浴びることができて、大変重宝していました。
我が家の勝手口も、例えば
駐車場からのアクセスがよく荷物を出し入れしやすい
家庭菜園にすぐに出られて、調理中に新鮮な野菜を採って来られる
など、明確な目的があれば、祖母の家の勝手口のように活用できたかもしれません。
③多すぎた通風窓
我が家には一年を通してほとんど開閉することのない窓があります。
収納の中、洗濯機の奥、2階の洗面台の上部など。
サイズは小さいですが、どれも開閉可能。
ところが、実際に暮らし始めてみると、通風のために開けるのは決まった窓だけ。
小窓を開けると急な雨の時に閉めるのが面倒だったり、開けること自体が面倒だったり。
キッチンや階段、個室の窓を開けておくだけで、風通しは抜群です。
小窓を開ける必要性がありませんでした。
計画当時は「窓」=「通風」「採光」という思い込みがあり開閉できるものを採用しました。
でも、開けない窓に「通風」の機能は必要ありません。
目的を「採光」に絞ってFIX窓にすれば、網戸も不要。
景観がすっきりして、メンテナンスの手間もかかりません。
コストも少し下がったでしょう。
勿体ないことをしました。
④ガルバ屋根×勾配天井の盲点
我が家の屋根材はガルバリウム鋼板です。
重量が軽く、見た目がすっきりとしていること、コストパフォーマンスの良さが決め手で選びました。
また、子供部屋と主寝室がある2階は勾配天井。
ベッドに仰向けになると屋根なりの天井に梁が見え、空間を広く感じさせてくれます。
ガルバの屋根も、2階の勾配天井も、それぞれはとても気に入っています。
でも、金属屋根と勾配天井を組み合わせた時にどうなるのか、想像できていませんでした。
盲点だったのは雨音。
雨が降ると金属屋根に打ち付ける雨音が、ダイレクトに室内に伝わってくるのです。
屋根には断熱材が入っているおかげで、多少の遮音効果があるはずです。
けれども、小屋裏空間があるとないとでは大違い。
土砂降りの夜は眠れないほどです。
屋根がガルバリウム鋼板ではなかったら。
勾配天井ではなく、小屋裏があったら。
これほど気にはならなかったかもしれません。
ガルバの屋根も、勾配天井の寝室も、ひとつひとつの要素は魅力的。
でも、組み合わさることで別の作用が生まれることもあるというのは盲点でした。
家づくりの難しさを痛感します。
⑤発想がなかった夫婦別室
我が家の主寝室は夫と私の共有空間として作った部屋です。
けれども、今現在は夫婦別々の部屋で寝起きしています。
きっかけは新型コロナウイルス。
夫は高齢者と接することの多いエッセンシャルワーカーのため、職場からも徹底した感染対策を指導されていました。
万が一の家庭内感染のリスクを少しでも減らすため、夫婦で寝る部屋も分けることに。
もともと私たち夫婦は就寝、起床時間が合いません。
夫は夜勤の日もあるため、その前後は昼夜逆転します。
明け方4時頃に寝に来た夫に起こされ、私は睡眠不足・・・なんていうことも珍しくありませんでした。
冷静に考えてみれば、最初から寝室を分けた方が合理的だったのです。
ですが、共有空間にしたのは、「夫婦は同じ寝室で過ごすもの」という固定観念があったから。
夫婦別室という発想がなかったのです。
最近では、夫婦それぞれの部屋を作りたいという考え方も浸透しつつありますよね。
リラックスして十分な睡眠を確保すること、プライベートタイムを持つことは、心身の健康のためにとても大切。
そして心身の健康は、穏やかで充実した家庭生活の礎でもあります。
自分とパートナー、お互いを尊重するために敢えて夫婦別室を選択する。
そんな発想があっても良かったのかもしれません。
さいごに
計画時には十分に検討し、納得したつもりで建てた家。
それでも「こうすればよかった」をゼロにするのは、とても難しいです。
「あって当たり前」という固定観念に縛られていたり、家族のライフスタイルを想像しきれなかったり。
年月と共にひとは年を重ね、ライフスタイルも変化していきます。
そして、新築時には完璧だと思っていたはずの家も、だんだんと完璧ではなくなっていくことこそ、自然な流れなのかもしれません。
では、家づくりで後悔しないためにはどうすれば良いのでしょう。
それは、自分が本当に大切にしたい暮らし方を見極め、その時点でのベストを選択することではないでしょうか。
暮らしていくうちに愛着が湧き、きっと慈しめる住まいになるはずです。
この記事で挙げた通り、我が家にも「こうすればよかった」という後悔はいくつもあります。
でも、私にとっては今もこれからも愛すべき我が家です。