減築リフォームで2階建てから平屋に 暮らしのダウンサイジング

高まる平屋の需要
近年、平屋の戸建て住宅に注目が集まっています。
かつては平屋と聞くと、こんなイメージがあったのではないでしょうか。
- コストがかかる
- 広い土地が必要
- 老後の備え(バリアフリー化)

子育て世代の選択肢として挙がることは稀だったように思います。
しかし、実際に平屋の新築着工割合は上昇傾向を続けており、若年層からも注目を浴びていることが度々メディアで取り上げられています。

国土交通省建築着工統計調査より
なぜ? 平屋人気の背景
どうして平屋建てに注目が集まっているのでしょうか?
平屋の需要がじわじわと増え続けている背景には、ライフスタイルや家族構成の変化が挙げられます。
晩婚化、少子化、高齢化などによる家族の縮小化が進み、コンパクトな暮らし方を求める人が増えているのかもしれません。
共働きがスタンダードになった現在の子育て世代にとって、住まいに求める価値観は変化しつつあります。
子育て世代が住まいに求めるのは・・・
忙しない日常の中で「家族」も「個」も大切にしたい
シンプルでミニマルな暮らしがしたい
長期的な維持管理においても効率を重視したい
画一的なモデルよりも自分らしさや多様性を尊重する生き方が、住まいに求める価値観にもリンクしているように思います。
また、高齢に差し掛かっている世代にとっても、平屋の利便性や安全性は理に適っています。
人生百年時代と言われる今、日本人の健康寿命は
男性:72.57歳
女性:75.45歳
(令和4年値 厚生労働省)
子どもが独り立ちした後にも第二、第三の人生が待っています。
長い年月を自立的に、且つ自分らしく暮らしたいと考えるのは自然なこと。

高齢者世代が住まいに求めるのは・・・
無駄なスペースを減らし、掃除やメンテナンスの負担を軽減したい
心理的負担を感じずに屋外にアクセスしたい
災害時への備えや、夏涼しく冬暖かい快適な室内環境も重視したい
幅広い世代のニーズに合致する住まいとして、平屋建てに注目が集まっているのではないでしょうか。
暮らしのダウンサイジングの提案
最近、住宅街を歩きながら周囲を見回すと、2階の雨戸を閉め切ったままのお宅が少なくないことに気が付きます。

子どもが独り立ちして高齢夫婦のみのお宅
パートナーとの死別や離婚で独り暮らしのお宅
両親が他界して独り暮らしになったお宅 など
住み始めた時とはライフステージが変わり、広いスペースを必要としなくなるケースは珍しくありません。
むしろ、その広さによって困り事や心配が増える場合もあります。

階段の上り下りが大変になってきたね・・・
広い家は維持管理の負担も大きいし

雨戸が閉めっぱなしだと空気がこもるし
防犯上どうなんだろう?
こんな場合に提案したいのが、暮らしのダウンサイジング。
暮らしのダウンサイジングとは、持ち物や生活の規模を縮小し、身軽で快適な暮らしを実現すること。
単なる物理的な縮小だけを指すのではありません。
家事や維持管理の手間、経済的な負担、心理的負担を減らすなど、“身軽に、豊かに生きる”ことが暮らしのダウンサイジングの本質です。
減築リフォームとは
暮らしのダウンサイジングの具体的な手法のひとつが、2階建てから平屋への「減築リフォーム」です。
既存の2階建て住宅の2階部分を解体・撤去し、残した1階部分へ新たに屋根を設置する改築工事を主とした方法です。
床面積を減らすことにより、住宅の維持管理負担を軽減、生活動線をコンパクト化することを目的としています。

暮らしのダウンサイジングには色々な手段がありますが、「減築リフォーム」の場合、住まいのカタチをライフスタイルに合わせることが可能です。
それまで暮らしてきた家や地域への愛着を手放すことなく、暮らしをダウンサイジングすることができます。
平屋に減築する場合のメリット・デメリット
2階建てから平屋に減築することで得られるメリットは、生活の利便性だけではありません。
安心して暮らすために欠かせない耐震性や耐風性におけるメリットも注目すべき点です。
もちろん、メリットがあればデメリットも。
デメリットを解消するために大切なのは、設計段階で対策することです。
費用対効果をよく検討することをおすすめします。
平屋に減築する場合のメリット
①耐震性の向上
- 2階部分を取り除くことで、建物全体が軽量化。地震時の揺れの影響が小さくなる
- 重心の位置が下がり、地震の揺れによる倒壊リスクが低減する
②耐風性の向上
- 風圧を受ける面積の縮小により、風の影響を受けにくくなる
- 重心の位置が下がり、強風時の転倒や損壊リスクが軽減する
③家事動線のコンパクト化
- 家事動作がワンフロアで完結する
- 掃除する範囲が縮小する
④省エネ性能向上、光熱費削減
- 建物体積の縮小により冷暖房効率が向上する
- 建物内の高低差(吹抜や階段など)による温度ムラが少なく、空調コントロールがしやすい
⑤維持管理費の削減
- 床面積の縮小により固定資産税を抑えられる
- 日常的な掃除や維持管理の手間が軽減する
- 減築後にさらにリフォームする場合、工事面積が少なくて済む
⑥バリアフリー性能UP
- 階段の上り下りがない
- ワンフロアで生活が完結するため、動線がシンプルになる
平屋に減築する場合のデメリット
①予算が想定以上に膨らむ場合も
- 工事内容が広範囲かつ多岐に渡るため、作業が複雑化する傾向がある
- 築年数や建物の状況によっては補修等の追加工事が必要になる場合がある
- 大規模な解体工事に伴う廃材処理、仮住まいのための費用、(増築がある場合)申請費用、変更登記手続き等が必要
②工事期間中は仮住まいへ
- 工事費とは別に仮住まいの家賃、引っ越し費用等が必要
- 引っ越しの手間、慣れない仮住まい生活の負担がかかる
③収納スペースの不足
- 全体として床面積が減少するため、収納スペースが不足する傾向がある
④採光、通風確保に工夫が必要
- 日当たりや通風がやや確保しづらくなる場合がある
⑤水害リスクの懸念
- 洪水や浸水が起こった場合、垂直避難ができない
減築リフォームの費用って?
多くの方にとって、最も気になるのは費用ではないでしょうか。
先述したデメリットにあるように、減築リフォームでは予算が想定以上に膨らんでしまう場合があります。
なぜなら、建物の構造や広さ、既存住宅の状態、リフォーム内容によって幅があるためです。
おおまかな費用の項目は以下のようになります。
※詳細は必ずご依頼先にご確認ください。
【解体・撤去工事費】 2階部分の解体、撤去、廃材処分など
【屋根新設・外壁補修費】 2階撤去後の屋根新設、外壁の補修・仕上げなど
【耐震補強工事費】 平屋化に伴う耐震補強
【内装工事費】 間取り変更、床・壁・天井仕上げ、バリアフリー化など
【水回り設備交換費】 キッチン・浴室・トイレなどの設備交換
【断熱補強工事費】 断熱材の追加・窓の交換など
【電気配線・設備工事費】 配線引き直し、照明・コンセント増設など
【足場設置費】 安全確保のための足場設置
※その他、仮住まいに係る費用、確認申請(増築部分がある場合)、変更登記手続きなどの諸経費
減築リフォームの費用を節約するために確認しておきたいのが、各種補助金制度。
以下に記載するのは代表的な制度です(2025年7月現在)
※必ず最新の情報を確認してください。
| 耐震補助金(自治体) | 対象:主に1981年5月31日以前に建てられた住宅の耐震補強工事 |
| 住宅省エネ2025キャンペーン(国の補助金) | 対象:断熱回収や省エネ設備の導入を伴うリフォーム 主な補助事業: ・子育てグリーン住宅支援事業:断熱回収や省エネ設備の設置 ・先進的窓リノベ事業:高断熱窓の設置 ・給湯省エネ事業:高効率給湯器の設置 ・次世代省エネ建材の実証支援事業:高性能断熱材の導入 |
| 長期優良住宅化リフォーム推進事業 | 対象:耐震・省エネ・劣化対策などを総合的に行うリフォーム |
| 所得税控除 | 対象:ローンを利用した場合、バリアフリー改修工事をした場合 |
| バリアフリー改修補助金 | 対象:高齢者対応のバリアフリー改修を同時に行う場合 |
各種補助金制度には申請受付期間が定められています。
予算上限に達すると早期終了する場合も。
確実に補助金を利用するには、最新の情報をチェックし早めの準備を整えることが重要です。
さいごに
ライフステージの変化や将来の維持管理負担に課題が生じた場合、改築、建て替え、移住など、多様な選択肢があります。
しかし、家族構成や暮らし方、コストなど、検討すべき基準が多岐にわたり、決して簡単な選択ではありません。
減築リフォームは、あくまでもその中のひとつの手段です。
ご自身やご家族にとって最適な住まいのカタチを見つけるためには、専門的かつ包括的な視点からの検討が欠かせません。
私たちは建築設計のプロとして、ご要望や状況に合わせたご提案をいたします。
ぜひお気軽にご相談ください。


