海の近くに14年間住んでみてわかった塩害のリアル

海の近くに住んでみてわかった塩害のリアル

我が家が建つ場所は、海岸から直線距離にして約800m。

春夏は海からの潮風が吹き、潮の香りが漂ってくる日もあります。

家を建てる前から「塩害」を受ける可能性があることは認識していました。

しかし、実際にどの程度の被害があるものなのか、家を建てた当時はほとんど想像できていませんでした。

この記事では、海の近くに14年暮らしてみたからこそわかった「塩害」のリアルな体験談をご紹介します。

塩害とは

塩害とは、空気中に含まれる塩分によって引き起こされる建物や植物への被害のことです。

大気中の塩分濃度は海に近ければ近いほど高いと考えられます。

海の近くでの暮らしは、常に潮風に晒されているようなもの。

ただし、地形や風向き、周辺環境によっても影響は異なるため、海からの距離が近くても影響を受けにくい場合もあります。

逆に、海から離れていても潮風が通る地形もあるでしょう。

地図上で確認しただけでは予測できないのが、塩害の難しいところです。

14年間住んでみてわかった塩害のリアル

「塩害」というと、真っ先に思い浮かぶのは金属のサビではないでしょうか。

特に想像しやすいのは、赤褐色や茶褐色の赤サビでしょう。

赤サビ

今回、家の外回りをぐるりと点検してみました。

建物や金属製品への影響

家の外周部を点検してわかったのは、意外にも赤サビが少ないこと。

その一方で、外壁の軒下部分にある白いサビが目立つことが気になりました。

① 外壁、シャッター、ポスト等に目立つ白サビ

白サビの発生が目立つのは、ガルバリウム鋼板の外壁の軒下付近、シャッターの屋外側、ポスト等。

ガルバリウム鋼板を留める釘のまわりも、白い粉状のもので覆われたように変質しています。

どの場所も直接雨が当たらない部分です。

軒下に見られる白サビ
軒下に見られる白サビ
釘廻りの白サビ
ガルバリウム鋼板の釘まわり

一方、同じガルバリウム鋼板でも、雨に濡れる部分は変質している様子がありません。

雨が降るたびに付着した塩分が洗い流されるのでしょう。

外壁だけでなく、屋根も同様です。

予想以上にきれいな状態を保っていました。

ガルバリウム鋼板の屋根
ガルバリウム鋼板の屋根 雨に濡れる部分はきれいな状態

「サビ」とは、金属と水、酸素の化学反応によって生じる自然現象です。

では、白サビと赤サビにはどんな違いがあるのでしょう。

いわゆる「赤サビ」の正体は「酸化鉄」

「白サビ」は、亜鉛やアルミニウムの酸化物である「酸化亜鉛」や「酸化アルミニウム」です。

赤サビ白サビ
赤サビ白サビ
見た目赤茶色、赤褐色
白色、灰白色の粉状
発生する金属とメカニズム主にが空気中の水分によって
酸化することで生じる
主に亜鉛アルミニウム(非鉄金属)が空気中の水分によって
酸化することで生じる
酸化による金属への影響徐々に腐食し、穴が開く、亀裂が入る等の深刻なダメージを与える耐食性にほとんど影響はない。
鉄などの母材を腐食から守る
「犠牲防食作用」がある。
ただし、長期間放置すると
亜鉛メッキ層そのものが劣化し、鉄が露出して赤サビを
発生させることもある。

白サビは、鉄などの母材を一時的に守る働きがあることから「良性」のサビとも言われます。

ですが、長期間放置すると赤サビの原因にもなり得ます。

また、いくら「良性」のサビであっても、美観を損なうという点においては否定できません。

白サビは、付着した塩分を定期的に洗い流すことで発生を抑えられる可能性があります。

しかし、外壁2階部分の軒下ともなると、散水して洗い流すのも難しいというのが実情です。

② 赤サビが見られた金属部品

外壁や屋根に赤サビは確認できなかったものの、建物の要所に使われている金属部品にはわずかながら赤サビが見つかりました。

赤サビが発生していたのは、換気扇のパイプフードや雨どいの金具など。

エアコンの室外機にも赤サビが見られました。

腐食が進んでいるというほどではありませんが、いざ見てみると気になります。

屋外で使用されるこれらの金属部品は、多くがステンレス製です。

実はステンレスにも種類があり、屋外でごく一般的に使われているのはSUS430。

コストパフォーマンスが高く、一般的な環境では十分な耐食性を発揮する素材です。

しかし、我が家のように潮風を受ける環境では、SUS304などのより耐食性の高い素材を検討すると良いのかもしれません

また、エアコンの室外機や換気扇のパイプフード等の場合は、「耐塩害仕様」や「重耐塩害仕様」の製品もあります。

通常モデルに比べコストはアップしますが、設置環境や費用対効果を考慮して選択すると良いでしょう。

③ 物干し竿の買い替え頻度

我が家で最も塩害の影響が如実に表れているのが物干し竿です。

この14年間で買い替えた回数は3回。

3~4年に一度買い替えている計算です。

我が家の物干し竿はいわゆる「ステンレス竿」

オールステンレスの物干し竿とは違い、スチールパイプにステンレス箔が巻かれたものです。

ステンレス箔に傷がついたり継ぎ目から水が入ったりすると、内部の鉄芯からサビが進行します。

約2年程に買い替えた物干し竿

このとき金属の酸化反応(サビ)を促進させる原因となるのが、潮風による塩分。

塩分と水分が合わさる金属表面で電解質となり、サビを急速に進行させます。

鉄芯のサビが進むと表面のステンレス箔が剥がれ出して洗濯物にひっかかったり、サビ色が洗濯物に付着したり・・・。

そうなれば、もう買い替え時。

次の買い替えの時には、よりサビに強いオールステンレスにしようと決めています。

④ 潮風の影響を受けにくい場所

我が家の場合、最も潮風の影響を受けにくいと思われるのは建物の東側。

夏場は西南西の風、冬場は西北西の風が吹くことが多いためです。

建物東側に設置してあるエコキュートは、全く錆びている様子はありません。

建物が潮風を遮ってくれるおかげで、塩害を受けにくいのでしょう。

計4台あるエアコンの室外機も、設置場所によってサビの出方が違います。

潮風の受け方も雨水の当たり方もそれぞれ違うため一概には言えませんが、設置場所に選択肢があるのであれば、より潮風の影響が少ない位置を選ぶことをおすすめします

庭木への影響

塩害を受けるのは建物や金属製品に限ったことではありません。

庭木や農作物も塩害によって生育不良を起こす場合があります

特に庭木への影響が大きいと感じるのが、台風による塩害。

台風は大量の塩分を含んだ風雨を内陸部まで運ぶことがあります。

つまり、海に近い地域でなくても塩害を受ける可能性があるということ。

台風が通り過ぎた後は植栽に水を撒くなどの対策が必要です。

① 入居直後の台風直撃 生垣が壊滅状態に

家が完成したのは2011年9月、台風シーズン真只中でした。

引っ越し当日は幸い晴天に恵まれ、無事に新居での生活をスタート。

ところがわずか数日後、我が家の地域に台風が直撃しました。

おかげで、植えたばかりのトキワマンサクがほとんど壊滅状態に!

トキワマンサクは春にかわいい花を咲かせる常緑中高木です。

ふんわりとした優しい雰囲気だからというだけでなく、育成しやすく病害虫にも強いことから、生垣に採用しました。

トキワマンサクの花

この時、実は台風通過直後には何の異変もありませんでした。

むしろ台風が去ってすぐに散水し、塩分をしっかり洗い流したつもりだったのです。

けれども、数日経つと葉が枯れはじめ、ほぼ全ての葉が落ちてしまいました。

トキワマンサクは、中程度の耐塩性があると言われている植物です。

多少の潮風には耐え得ると考えていました。

後でわかったことは、根がしっかりと張る前に塩害を受けると枯れてしまうとのこと。

幸い保障で植え替えができたため、台風シーズンが落ち着いてから植え替えしてもらいました。

② 紅葉しないもみじ

我が家の和室から庭を望むと、株立ちのイロハカエデ(もみじ)が植えてあります。

このイロハカエデに関して、外構屋さんからこんな忠告を頂きました。

Gardener

つまり、塩害を受けて枯れてしまうだろうとのこと。

確かにその場所は風の通り道に位置しています。

夫婦で話し合いの末、要望どおりイロハカエデを植えました。

結果は、まさに外構屋さんのおっしゃる通り。

14年間暮らしてきて、このイロハカエデがきれいに紅葉したのを見たのは2~3回。

台風の襲来がなかった年だけです。

なかなかきれいな紅葉が見られない我が家のもみじ。

無事に紅葉した様子を見ると、台風の被害に合わずに夏を乗り切れた!と実感します。

実際に海の近くに暮らしてみて思うこと

朝、目が覚めた瞬間に潮の香りを感じることがあります。

開け放していた階段の窓から、塩を含んだ外気が入り込んでいるのでしょう。

そんな日は、そんな時は、たいてい風がなく湿気が多い日。

洗濯物もなるべく室内に干します。

とはいえ、潮の香りが気になる日が頻繁にあるわけではありません。

正直なところ、日ごろから塩害を受けているという実感はほとんどありません。

ただ、気になる瞬間が時折やってくるのです。

日常的な実感が薄く、影響に気づくまでに時間がかかるのが、塩害の難しいところだと感じています。

さいごに

いち主婦の立場からすると、はじめから塩害対策にコストをかけるのはなかなか難しいもの。

なぜなら、実害を予測するのが難しいからです。

我が家の場合は、計画時に塩害対策にコストをかけませんでした。

今となっては「少しくらい検討すれば良かった」と思わなくもありません。

しかし、コストをかけていたら14年経ってもサビが生じなかったか? という問いも、答え合わせのしようがありません。

言ってみれば、使うかどうかわからない保険をかけるようなもの。

正解があるわけではないため、個人の判断に委ねられているのです。

もし、塩害対策をどう考えるか、判断に迷っている方がいらっしゃいましたら、この体験談をひとつの参考にして頂ければ幸いです。

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