我が家にとってちょうど良い 軒のある暮らし

軒のある暮らし

こんにちは。

かとう建築設計事務所の主婦×建築士です。

【家を建てる時、建てから】では、私が家を建てた時に考えていたこと、実際に住んでみて感じていることなどを、主婦の目線を交えつつ綴っていきます。

私の家は昨年で10周年を迎えました。

建築したのは、かとう建築設計事務所入社前のこと。

ちょうど東日本大震災があった年です。

子どもが生まれて半年ほど経った頃に検討を始め、知人の勤める建築士事務所に依頼して建てました。

我が家の基本情報

2011年に自然素材の家を建築

ムクの床材、漆喰壁、造作建具、造作キッチンなどが特徴

家族構成は筆者、夫、子ども2人、うさぎ1匹

軒がある家にした理由

柔らかい日差しが入るリビングで読書をする

縁側から庭で遊ぶ子供を見守る

夏は風がよく通る縁側に座って、麦茶でほっと一息

冬は日射しでぽかぽかに温まった床にゴロンと寝転がる

これが私たち夫婦で話し合った暮らしのイメージです。

「子どもを見守りながら家事ができるLDKにしたい」

「個室は主寝室と子供部屋、1階には小さな和室が欲しい」

「自然素材を使ったナチュラルな内装にしたい」

など、間取りや仕様の具体的な要望は、もちろん家づくりに欠かせないものです。

過去ブログ:【家を建てるとき建ててから】

心地良いLDKづくり
12年住んでわかった心地良いLDKづくりに欠かせないこと
自然素材の家
主婦×建築士の家づくり 自然素材の家

でも、どんな風に暮らしたいか? という漠然としたイメージも実は大切。

私たち家族は、ささやかな日常を心地良く過ごせることを大事にしたいと考えていました。

これらの暮らしのイメージを実現するために取り入れたのが、深い軒と縁側です。

軒に求める役割

軒には雨や雪、日射しなどから建物を守る役割があります。

時には雨傘のような、また時には日傘のような役割、と言えばイメージしやすいかもしれません。

その恩恵として、外壁の耐久性や冷暖房効率の向上が見込めるとも言われています。

私が深い軒の家にしようと思った理由は、前述の通り、暮らしのイメージを叶えるため。

要するに雰囲気です。

そのため、軒の役割に対する期待は、実は二の次でした。

でも、せっかく軒を出すのなら、その機能美も活かせた方がお得です。

夏場は日射しを遮り、冬場は暖かな日射しを取り込める

外観のバランスもかっこよく

そんな、ちょうど良い塩梅のサイズを検討しました。

真夏の日射しと真冬の日射し

日本では一年を通して太陽の通り道が変化しますよね。

1年で最も日が長い夏至の南中高度は、おおよそ80°

逆に、太陽が低い位置を通る冬至の南中高度は、おおよそ32°です。

Casio 生活や実務に役立つ計算サイト Keisanより 静岡県浜松市の場合

季節によって変化する南中高度をもとに検討したのが下の図です。

軒の深さ

LDKの南面の軒は、約1800ミリ。

洗濯物干し場としても十分になるような深さです。

太陽が低い位置を通る真冬には室内まで光が届きます。

一方、太陽の位置が高くなる真夏は軒が日射しを遮ってくれるため、部屋の中に直射日光は当たりません。

軒のある家に暮らしてみて

実際に生活してみると、我が家にとって軒は実にありがたい存在です。

強い風雨でない限り、洗濯物も窓も濡れない

多少の雨なら、洗濯物を干していても濡れる心配がありません。

外出時に雨が降り出しても、かなりの強風ではない限り大丈夫。

また、LDKは窓自体が濡れることもほとんどありません。

窓が軒先から約1800ミリ下がっているため、網戸にしておいても吹き込む心配がないのです。

実は雨の日や湿気が多い曇りの日は、窓ガラスのお掃除に適しているのをご存知ですか?

しとしと雨が降る中、縁側に出て窓拭きをすることもあります。

梅雨時などパッとしないお天気が続いても、窓をきれいに磨いて心はスッキリです。

過去ブログ:【住まいのお手入れ】

 ≫効率よくピカピカに! 窓ガラスのお手入れ方法

ほど良く日射しを遮ってくれる

4月から10月くらいにかけては、LDKに直接日が差し込むことがなくなります。

ずっと日陰にいるような状態。

室温上昇を抑えられるのはもちろん、私にとって一番嬉しいのは眩しくないこと。

家を建てる時には気にする余裕がなかったのですが、私は光の刺激に弱く、眩しいのが苦手です。

もし太陽の光がたっぷり降り注ぐ家に住んでいたら、室内でもサングラスが必要だったかもしれません。

深い軒が特徴的な、昔ながらの日本家屋を想像してみてください。

建物の中に入ってみたとき、ちょっと暗いと感じるでしょうか?

それとも、落ち着く薄暗さだと感じるでしょうか?

ひとの感覚はそれぞれ異なるため、当然、明るさに対する感覚もみんな違います。

好きな食べ物や心地良い気温がみんな違うように、ちょうど良いと感じる明るさも異なるのです。

実際、身内から「部屋の中、暗くない?」と言われたことがあります。

確かに読書や手仕事をする時には手元灯が必要なこともあります。

ただ、光刺激が苦手な私にとっては、いつも木陰にいるような感覚でリラックスして過ごせるのです。

太陽が低くなる冬の期間は室内まで日射しが届きます。

軒の出が900ミリのランドリールームは、日射しでいっぱいになるほど。

ランドリールームに入ってくる日射しは洗濯物を乾かし、床や室内を温めてくれます。

でも、眩しさが気になる時は、リビングとランドリールームの間のバーチカルブラインドで調整。

眩しさ対策をしつつ、冬の日射しの恩恵をありがたく享受しています。

軒下空間を楽しめる

我が家は深い軒の下が縁側になっています。

窓の外でありながら屋根(軒)があり、日射しや雨から逃れて過ごせる場所として重宝しています。

庭のお手入れに疲れたら、縁側に腰かけてひと休み。

冷たいお茶と甘いものをお盆に乗せて運べば、そのままお茶の時間に。

冬はただただ日向ぼっこすることも。

夏場とは違い、太陽の光に十分温められた木の縁側は、なんとも言えないぬくもりを感じます。

子供が小さかった頃、雨で外に遊びに行けない時によくやったのが、軒下でしゃぼん玉。

実はしゃぼん玉は雨の中の方が割れにくいのです。

晴れた日のしゃぼん玉とはまた違った楽しみ方ができて、子供も大喜び。

外でありながら室内の延長のような軒下空間。

私たち夫婦の暮らしのイメージにはぴったりでした。

さいごに

軒のあるなしで外観の雰囲気は大きく変わります。

室内の環境や省エネ効率にも影響するでしょう。

また、軒の出を大きくすれば当然、その分の建築費用がかかります。

そもそも敷地に余裕がなければ、軒を出すのが難しい場合もあります。

メリットデメリットを足し算引き算で考えだすと、何がベストか判断するのがわからなくなるほど奥が深い「軒」

私たち家族は、理想とする暮らしを実現したくて軒を出すことを選びました。

幸い敷地が広く、軒のある外観も好みにぴったり。

コストは・・・ちょっと頑張りましたが。

結果として、ちょうど良い塩梅だと感じています。

軒のある生活は、家族で過ごす時間にささやかな彩りをもたらしてくれています。

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